|
「旅は、体力と時間があるうちにいかなくちゃ、行けなくなるよ」と社会人の知り合い達からしばしば助言を受ける。お頭は少々弱し、されどチャレンジ精神だけは結構ある。時に日常を離れて現実逃避したい気持ちもあるし、また助言されたことを良いことに、大学生になって以来お金を貯めては旅行に行く。どこにいこうかしら?やっぱり遠い場所は時間を要するので、「おとな」にとって長期休暇は難しいに違いない。だから、学生の間に出来るだけ遠隔地を訪れるようにしている。 あっちだこっちだと訪問する中で、私はすっかりあるもののトリコになってしまった。今日はその話し。タンザニア、モロッコ、スペイン・グラナダやコルトバ、ウズベキスタン。共通のキーワードは「Islamic Art」だ。イスラーム国家のモロッコ、ウズベキスタンにはもちろん、スペインには、レコンキス以前のアルハンブラ宮殿や、アラブ回教寺院(メスキータ)などイスラーム文化の史跡が多く残っている。 「Islamic Art」という言葉は、あまり聞きなれないかもしれない。イスラーム教に特化した芸術であるだけでなく、イスラームの規範や影響下にある場所で作られた非宗教的な芸術も含む。共通的なのは、スタイルや制作目的が統一的だということ。今回はイスラーム芸術とは何か?という話しを少々してみる。 中でも特徴的かつイスラーム美術でもっともよく見られるのは、calligraphy(イスラーム書道)だ。アラビア語について全く知らない人間にすれば、大変失礼な言い方ながらも、へびが張っているように見えてしまうかもしれない。しかし、実際にはイスラーム教の聖典、Qur’anコーランとの関係により、最も崇高な芸術形態ともされている。陶芸や織物などから、宮殿やモスク等の建築物上にも描かれている。金属や石やガラス、木など素材を問わず、イスラーム芸術の至るところに見られることを考えても、ほんとにマストアイテム。 イスラーム芸術のもう一つの特徴は、幾何学的文様で構成されるデザインのパターンだ。複雑な幾何学文様や、動植物文様から成る装飾パターンは、終わることなく繰り返され拡がりを思わせる。これは、一部の人々の間では、神(アッラー)が永遠をも思い起こされるのだそうだ。非具象的な装飾が発達した理由の一つに、具体的なイメージを持たないことにある。もちろん、具象的な芸術は、時代や場所を問わずに用いられることもしばしばあるが、これはプライベートな部分に限られているらしい。通常、偶像ないし偶像崇拝がコーランで禁止されているイスラーム教において、ことだ。また、装飾芸術が発達したことは、絵画や彫刻等が著しい発達を見せた西欧美術との比較でも面白い。 狭義では幾何学的文様のことを示すのだけど、広義では、上に挙げたようなイスラーム芸術の装飾技法全体を「アラベスク」と呼んでいている。この「アラベスク」に加えて、私がイスラーム芸術で大好きなのは、そのイスラームの鮮やかな色使いだ。緑から青色までの澄んだ色彩を多用し、中でもターコイス色は、イスラーム圏で神聖な色とされているので、イスラーム芸術には欠かせない。 こうした統一的な一種のルールを用いているから、どの国に言ってみても、どこかで見たことがあるような、なつかしい気持ちになる。同時に、芸術の枠組みはある程度定まっているのに、色使いや文様は少しずつ異なり、その土地ごとの独自性も醸し出す。私がイスラーム圏を旅行するのが好きな理由のひとつは、この懐かしさの中にある新しい発見があることだ。イスラーム芸術が少し分かったところで、次回は、ウズベキスタンにおけるイスラーム建築について考える。 参考文献: Eva Wilson Islamic Design, 1989 Bat Yeor Islam and Dhimmitude: Where Civilizations Collide イスラーム陶器の世界http://www.page.sannet.ne.jp/orion/cini/cini0.html Online Islamic Art Gallery http://www.superluminal.com/cookbook/index_gallery.html あらびあごどっとこむhttp://www.arabiago.com/links/art.html 中東協力センターニュースhttp://www.jccme.or.jp/ 【三木はる香】 |