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Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『ミレー3大名画展 ヨーロッパ自然主義の画家たち』に行った。ちなみに開催期間は今週末までなので、駆けこみに近かった。展示はパリのオルセー美術館と共同企画されたもので、ジャン=フランソワ・ミレーの3大名画≪晩鐘≫≪落穂拾い≫≪羊飼いの少女≫を中心に、クールベ、ブルトン、バスティアン=ルパージュなどを初めとした、19世紀のヨーロッパ自然主義の流れをくむ画家たちの作品が一堂に会していた。特にこの展示の話題性は、これらの3大名画が日本で1ヶ所に集められるのがおそらく最初で最後の機会だということである。これらの作品を見るためにパリまで行くお金も時間もないという人には、まさに千載一遇のチャンスというわけだ。 全体を通して画家たちは題材として、名もない農民たちの日々の暮らしを扱っている。労働に荒れたふしくれだった手、収穫の喜び、神への祈り、1日の仕事が終わったあとの束の間の休息。労働の苦しみとささやかな喜びを積み上げた淡々とした生活。画家たちはそれらに対して限りなく優しい眼を向ける。当時の素朴な農民の息づかいが直に伝わってきて、彼らをとても身近な存在に感じられたし、とても温かな気持ちにさせられた。神様や貴族など、一見して誰もが美しいと思うものではなく、日々の労働に勤しむ人々の中に魅力を見出した画家たちの視点が素晴らしいと思った。 その中でもミレーはこうした視点を最初に持った画家である。彼は裕福な家に生まれながら、農村に住む人々に眼を向け続けた。それは農民の貧しさに対する社会批判を必ずしも意図していたわけではなかったというから、彼としてはごく自然に身近なものを題材に取り上げただけだったのかもしれない。しかしその題材がミレーの類い稀な観察力、描写力、色彩感覚、構成力と出会ったとき、これらの貴重な作品となったのだと思った。私は3大名画の中でも、特に≪羊飼いの少女≫という作品に惹かれた。ミレーの娘がモデルだとされるうつむいた羊飼いの少女の崇高さ、その足元の草原の緻密な表現、薄明るい空、限りなく広がる地平線、もこもこした羊たちの質感などが絶妙に組み合わせられていて、全体から柔らかな雰囲気が伝わってきた。展示の説明の中に、ミレーは農民の日々の生活に“詩情をこめて”描いたとのコメントがあったが、なるほど確かにそうだと感じた。話は逸れるが、私が特にこの作品が好きなのは、羊飼いという存在に惹かれるからかもしれない。人間ではなく羊と穏やかな関係を築きながら、自然に合わせて放浪する生活。日々何を思って暮らすのだろうなどと想像する。 印象に残った作品は他にも多くあった。バスティアン=ルパ―ジュの≪眠りこけた小さな行商人≫(これは、疲れたのか道端で眠ってしまっている少年を描いた作品なのだが、その口を開けたあどけない顔がほほえましい)のかわいさとか、写実主義の細かな描写にそろそろ飽きた頃、ふっと登場したエミール・ベルナールの≪収穫もしくはブルターニュ地方の風景≫のシンプルで思いきった発色の良さに思わず眼をみはったりだとか。ミレーから始まり、ゴッホ、ピカソ、ピサロに至るまで多くの画家たちに影響を与えた、自然主義の流れを心から楽しんだひとときだった。 『ミレー3大名画展 ヨーロッパ自然主義の画家たち』 2003/4/10(木)→7/13(日) Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催中 【白土翔子】 |