天下国家からトイレの中まで
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 11月19日(火)のコラム

武士道外交3

 外務省官僚というものは、ポーランド孤児救出を即断した明治・大正の頃のものと、情報の隠蔽に四苦八苦する今のものとは、もはや全く別のものになってしまったのか。或いは、明治・大正の日本人と今の日本人とは本質が全く違うものになってしまったのか。以上のことを、2週間、おでんを食いながら考えてきた。

 思うに、日本人はさほど変わっていない。ただ単に世が違うだけであると考えた。

 三国志の英雄・曹操を評した「治世の能臣、乱世の奸雄」という言葉がある。平和な時代では単にデキル官僚に留まるだろうが、乱れた時代には豪傑になるということである。逆に言えば、大傑物になる人間でも、治世においては「そこそこ」の人間で終わってしまうということである。

 あるいは、もし治世に於いても乱世の奸雄のように振舞おうものなら、江戸時代に浪人を集めて幕府の転覆を企てた由井小雪のようになって御仕舞いであろう。

 事実、治世である平安時代や江戸時代の大方の間よりも、戦国時代や幕末、明治時代といった乱世の方が、大物と言われる人が出ている。

 というわけで、今の日本人が小物ばかりで、また外務官僚に何の気概が無くても、それは治世と言うもの流れの常であり、日本人の本質云々とは相成らないように思えるのである。

 間違っても「俺も、羽柴秀吉や大久保利通のように、時代をこの手で大きく変えてやろう」などとおおそれたことはこの治世ではゆめゆめ考えない方がいい」。

 では結局、治世に於いては時流に逆らわず、ただそれに身をゆだねてのほほんとしていればそれでよいのか。否であろう。

 明治維新後の日本が権謀術数うずめく世界の中で、独立国としての体を保ち、やがては列強の一角であるロシアと戦い負けなかったのは何故か。色々要因はあろうが、一つは江戸時代から培われてきた「精神」の存在も大きいであろう。「武士道」やいわゆる「和魂洋才」の和魂のことである。つまり勇気や敢為忍耐の精神、仁や惻隠の心である。これらの精神を、西洋から入れた技術とあわせもっていたことで、日本は快進撃を遂げたのであろう。日露戦争まで。

 そして、以後はこれらの精神が薄れ、どうしようもない時代を迎えどうしようもない戦争を引き起こしたのである。

 治世では、今見てきたように、乱世で役に立つ「もの」を培っていくべきなのではないだろうか。もちろん再び武士道を復活させ規範にしようということではない。しかし今という治世には「武士道」や和魂のような世界に通じる「精神」はどこにも見当たらない。これで乱世を迎えたとき、果たして社会はどうなるものか、不安を覚えるということなのである。

  【を】

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